灰外 達夫/Haisoto Tatsuo
灰外達夫は、重要無形文化財「木工芸」の保持者(人間国宝)として認定されている木工工芸作家です。「デザインありきではなく、まず技術ありきであり、技術がデザインを作る」という自身の言葉の通り、灰外は「挽き曲げ」という高度な技法によって精緻を極めた作品を数多く手がけました。
1941年、石川県珠洲市に生まれた灰外は中学校を卒業すると、正院町にて建具作りの修業を始めました。その中で学んだ木工芸の技術が、後の「挽き曲げ」等の技法につながっていくのですが、彼が本格的に木工芸に取り組み始めるのは、やや時間をおいて1977年のこととなります。重要無形文化財「木工芸」の保持者である氷見晃堂(ひみこうどう)の遺作展で感銘を受けたことが転機となりました。1981年に第28回日本伝統工芸展にて初入選を果たして以降、数々の賞を獲得した灰外は、その技術と地位を着実に高めていきます。中でも、灰外の代名詞である「挽き曲げ」は、特殊なのこぎりで木板に挽き目を入れ、部分的に曲げながら造形するという手法であり、挽き目の深さや角度の調整などに緻密さが求められます。灰外はこの方法を用いて、細やかな多角形の模様を施し、神代杉や神代楡などの素材の木目を表情豊かに活かしました。
1980年からは独学で陶芸を始め、1995年に日本陶磁協会賞を受賞するなど、本業にとどまらない活躍を見せた灰外は、芸術そのものへの飽くなき探究心を備えていたと言えます。晩年は後進の育成にも励み、石川県立輪島漆芸研究所の講師を務めました。
作品名:神代杉木象嵌造挽曲手付花入
サイズ:H50.5×W16cm(共箱)
価格:800,000円