ルーシー・リー/Lucie Rie
ルーシー・リーは、20世紀を代表するイギリスの陶芸家です。1902年、ルーシーはウィーンの裕福なユダヤ系の家庭に生まれます。この頃のウィーンでは、画家のグスタフ・クリムトや建築家のヨーゼフ・ホフマンの活動により、芸術界に新たな気運が胎動していました。こうした時流の中で、彼女の瑞々しく先鋭的な感性が育まれることになります。ルーシーが陶芸家を目指す契機となったのは、1921年から通い始めたウィーン工業美術学校における、ろくろとの出会いでした。その面白さに魅せられた彼女は作陶を始め、めきめきと頭角を現していきます。
ほどなく、国際的な展覧会で受賞を重ね、陶芸家としての地位を確立しますが、その一方で、戦争の足音がとどまることなく迫りくる時代でもありました。迫害の影が忍び寄る1938年にロンドンへ亡命し、それ以降、半世紀以上にわたってこの地を拠点に制作を続けました。同じくドイツ出身の陶芸家であるハンス・コパー(1920〜1981)とは、亡命先であるロンドンの工房で共に働き、ときには共同制作にも取り組みながら、それぞれ独自の作風を築き上げていきました。
ルーシーがろくろから生み出す、薄く優美な輪郭は抑揚のきいた造形を作りあげ、繊細な印象と凛とした佇まいで鑑賞者を魅了します。また、象嵌や掻き落としといった手法による独創的な文様や、あたたかく名状しがたい釉薬の色合いからは、常に新鮮な驚きと喜びにあふれていたルーシーの制作風景を思い浮かべることができるでしょう。
作品名:皿
サイズ:H4.4×D26cm(セラミック)
価格:800,000円