宮脇 愛子/Miyawaki Aiko
宮脇愛子は日本の彫刻家、画家です。東京生まれの宮脇は、1952年に日本女子大学文学部史学科を卒業すると、文化学院美術科に学び、洋画家の阿部展也や美術家の斎藤義重に師事しました。特に斎藤は、もともと作品を発表するつもりのなかった宮脇に対して、人に見せる意義を諭し、芸術家としての道を開かせた存在でもあります。
その後宮脇は1957年から1966年にかけて、東京のみならず欧米各地で活動を展開します。滞在中、マン・レイをはじめとする著名なアーティストたちと親交を深めるとともに、画商のアンドレ・シュレールと契約して個展を開催するなど、その才能をめきめきと伸ばし、開花させていきました。
初期は、絵肌や質感が強調された、レリーフのような油彩の抽象絵画を制作していましたが、帰国した1966年以降は、立体作品が創作の主軸となります。扱う素材も、真鍮のパイプやガラスと多岐にわたりました。こうした変化が見られる一方で、同一のモチーフの反復や光の効果など、平面作品の時代から一貫しているコンセプトも窺われます。上記のような変遷を経て生み出されたのが、ステンレスのワイヤーを用いた宮脇の代表作「うつろひ」シリーズです。「空に線を描く」イメージの延長にあるこの作品群は世界各地で展示され、季節や時間によってその形態を、あるいは空間全体を様変わりさせながら、鑑賞者に新鮮な景色を見せ続けています。
作品としての形以上に、その背後に見え隠れする「あらぬもの」を探した宮脇の芸術は、確かなものが失われた現代においてこそ、より自由に、よりしなやかに語りかけてくることでしょう。
作品名:無題
サイズ:5.8×9.5cm(板にミックストメディア)
価格:ASK